2012年01月12日

変形労働時間制の事例

変形労働時間制とは,原則である1日8時間,週40時間の規制を適用せず,ある一定期間(1週間,1ヶ月,1年)を平均した所定労働時間が週40時間以内であればよいとする制度のことです。

例えば1週間の実労働時間が以下の通りだったとします。

日→8時間
月→10時間
火→休み
水→10時間
木→7時間
金→5時間
土→休み

1日8時間を超える労働の日もありますが,週の合計は40時間ですので,変形労働時間制を適用していれば時間外労働は発生しません(ただし1週間単位の場合,1日の労働時間は10時間までです)。
また,1週間単位の変形労働時間は,従業員30人未満の会社に限られ,小売業・旅館・飲食店などの業種のみとされています。


次は,1ヶ月単位の変形労働時間制を見てみましょう。

第1週→45時間
第2週→30時間
第3週→42時間
第4週→43時間

これも1週間で40時間を超える週がありますが,合計160時間で週平均40時間となっていますので問題ありません。
ただし,1日8時間を超える日,1週40時間を超える週はを就業規則等で特定しておかなければなりません。

最後に,1年単位の変形労働時間制についてですが,1週間・1ヶ月単位に比べて細かく規定されていますので,その点について以下にまとめておきます。
・1日の労働は10時間まで(1週間単位の場合も同じ)
・1週間の労働は52時間まで
・週48時間を超える週は,連続して3週間以内
・週48時間を超える週は,3ヶ月毎に3週以内

また,変形労働時間制を適用するには,労使協定を締結して労働基準監督署へ届出をする必要があります。
posted by テッキー at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月16日

変形労働時間制の事例【時間外労働の算出方法T】

変形労働時間制でも時間外労働は発生します。
今日は,変形労働時間制の時間外労働の算出方法についてお話します。

@まず,1日ごとの時間外労働になる時間をカウントします。これは,所定労働時間を超え,かつ,法定時間(8時間)を超える時間の合計です。
(ア)所定労働時間が8時間を超える日の場合は,その所定労働時間を超えて労働した時間
※例えば1日の所定労働時間が9時間の日に10時間働いた場合
  →10時間−9時間=1時間
(イ)所定労働時間が8時間より少ない日の場合は,1日8時間を超えて労働した時間
※例えば1日の所定労働時間が7時間の日に10時間働いた場合
  →10時間−8時間=2時間
(ウ)1日ごとの時間外労働になる時間数(ア+イ)
※上記の例では,ア(1時間)+イ(2時間)=3時間。これが1日ごとの時間外労働の時間数です。

A次に,1週間ごとの時間外労働になる時間をカウントします。これは,所定労働時間を超え,かつ,法定時間(40時間)を超える時間の合計です。
(ア)所定労働時間が週40時間を超える週は,その週所定労働時間を超えて労働した時間(ただし,@で1日ごとの時間外労働とされた時間は除く)
※例えば週所定労働時間が43時間の週に45時間働いた場合
  →45時間−43時間=2時間
  その中に1日ごとの時間外労働となる時間が1時間ある場合(@ア)
  →2時間−1時間=1時間
(イ)所定労働時間が週40時間より少ない週の場合は,週40時間を超えて労働した時間(ただし,@で1日ごとの時間外労働とされた時間は除く)
※例えば週所定労働時間が週39時間の週に43時間働いた場合
  →43時間−40時間=3時間
  その中に1日ごとの時間外労働となる時間が2時間ある場合(@イ)
  →3時間−2時間=1時間
(ウ)1週ごとの時間外労働になる時間数(ア+イ)
※上記の例では,ア(1時間)+イ(1時間)=2時間。これが1週間ごとの時間外労働の時間数です。

次回に続きます。
posted by テッキー at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月18日

変形労働時間制の事例【時間外労働の算出方法U】

前回の続きからお話します。
@1日ごとの時間外労働,A1週間ごとの時間外労働をカウントしましたので,最後は,

B変形期間を通じて時間外労働になる時間をカウントします(1週間単位の変形労働時間の場合は前回やり方Aまでで終了です)。
つまり,変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間です(@,Aで時間外労働とされた時間は除く)。

変形期間における法定労働時間の総枠の算出方法は,
「40時間×変形期間の歴日数÷7日」です。
例えば,変形期間1ヶ月(30日)=171時間25分(171.42時間)
     変形期間1ヶ月(31日)=177時間8分(177.14時間)
     変形期間1年(365日)=2,085時間42分(2,085.71時間)

1日及び1週間ごとの時間外労働に該当しなくても,上記のようなそれぞれの法定労働時間を超えれば,それは時間外労働として計算しなければなりません。
ですから,@1日ごとの時間外労働+A1週間ごとの時間外労働+B変形期間を通じた法定労働時間を超える時間外労働=変形労働時間制における時間外労働数ということになります。
posted by テッキー at 10:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月20日

フレックスタイム制の事例

フレックスタイム制とは,一定期間(通常1ヶ月)の総所定労働時間を定めておき,労働者がその範囲内で各日の始業時刻と終業時刻を自分で決定して労働する制度です。
フレックスタイム制は,労使協定を締結し,就業規則にその旨を記載しなければなりません。定める項目は以下の通りです。
・対象労働者の範囲
・清算期間(通常1ヶ月)
・清算期間における総所定労働時間
・標準となる1日の労働時間
・コアタイム(必ず労働しなければならない時間帯)を決める場合はその始業と終了時刻
・フレキシブルタイム(いつ出勤または退勤してもよい時間帯)を決める場合はその始業と終了時刻

例えば,このように定めることができます。
・対象者→本部に属する者
・清算期間→1ヶ月
・総所定労働時間→150時間
・1日の標準労働時間→9:00〜17:30(休憩12:00〜13:00)
・コアタイム→10:00〜12:00,13:00〜15:00
・フレキシブルタイム→7:00〜10:00,15:00〜20:00

また,フレックスタイム制は1日・1週間の法定時間規制を受けない変形労働時間制の一つなので,清算期間(通常1ヶ月)での総実労働時間に対してだけ法定労働時間規制がされます。

清算期間(1ヶ月)における法定労働時間の総枠の算出方法は,
「40時間×清算期間の歴日数÷7日」
(変形労働時間制の1ヶ月単位の算出方法と同じです)

例えば上記の例(清算期間1ヶ月,総所定労働時間150時間)で,実際は200時間働いたとします。
もし,この清算期間の1ヶ月が30日だとしたら,その法定労働時間は171時間25分なので21時間25分までは法内残業としての残業代を,それを超える28時間35分については,法外残業として25%割増の残業代を請求できます。
posted by テッキー at 10:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月24日

みなし労働時間制の事例

実労働時間による労働時間算定の原則に対して,労働基準法は実労働時間のいかんに関わらず,あらかじめ定められた一定の「みなし時間」を実労働時間とすることを認める「みなし労働時間制」を定めています。

例えば,みなし労働時間を「1日8時間」とした場合,その適用を受ける労働者が1日10時間働いても,1日5時間しか働かなくても,その日の実労働時間は1日8時間とみなされる,というものです。

ですから,1日10時間働いても法定労働時間(8時間)を超過したことにはならず,時間外労働とはなりません。
逆に,5時間しか働いていなくても,使用者は労働者に8時間分に相当する賃金を支払わなければなりません。

なお,深夜労働や休日労働については,実労働時間の長さにかかわりなく,割増賃金となりますので注意しましょう。

みなし労働時間制には,大きく分けて「事業場外労働」と「裁量労働」の2種類があります。
次回はそれぞれの特徴についてお話します。
posted by テッキー at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月25日

みなし労働時間制の事例【事業場外労働】

労働者が事業場外で業務に従事するため,使用者の指揮監督が及ばず,その実労働時間を把握することが困難な場合に,「所定労働時間働いたもの」とみなす制度です。
具体的な職種としては,営業マンや新聞記者などが挙げられます。

また業務を遂行するために,通常所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合は,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を定めた上で,そのみなし時間を働いたものとみなされます(この場合は「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」>「通常所定労働時間」です)。
その「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が法定時間(8時間)を超える場合には,労使協定を締結が必要になるとともに,割増賃金の支払が発生します。
例えば,所定労働時間が7時間で,みなし時間(当該業務の遂行に通常必要とされる時間)が9時間とされていれば,法内残業1時間,法定外残業1時間の時間外労働ということになります。

すべての労働を事業場外で行う場合は上記の方法で構いませんが,業務によっては労働時間の一部を事業場内で,一部を事業場外で行うこともあります。
その場合は,「事業場内での実労働時間+事業場外でのみなし時間」となります(ただし,これを合わせた時間が所定労働時間におさまる場合は,所定労働時間を労働したものとみなされます)。
例えば,所定労働時間が9:00〜17:00(休憩1時間)の7時間で,事業場外労働に必要とされる時間(当該業務の遂行に通常必要とされる時間)が6時間とします。
8:00〜10:00は事業場内で労働し,10:00からに外勤に出て直帰したとすると,始業前の1時間+事業場内の1時間+みなし時間6時間=8時間の労働となり,法内残業が1時間発生することになります。
posted by テッキー at 13:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月27日

みなし労働時間制の事例【裁量労働】

労働時間の算定にあたって,裁量性の高い労働に従事している者については,実労働時間でなく,あらかじめ定められた一定時間(みなし時間)働いたものとみなす制度です。
裁量労働は,「専門職」と「企画職」の2つに分けられます。
専門の裁量労働については,例えば研究開発職・デザイナー・弁護士など,業務遂行の手段や時間配分に関して使用者が具体的な指示をするのが困難な職種を対象とし,労使協定の締結が必要です。
一方,企画職の裁量労働は,経営企画・人事労務など,事業運営に関する企画・立案・調査・分析の業務が対象となります。
また,対象者は「適切に業務を遂行するための知識・経験を有する者」に限られており,労使委員会の5分の4以上の多数による決議と届出が必要とされ,さらに労働者本人の個別具体的な同意が必要なので,専門職よりも厳しい要件となっています。

ただし,いずれにしても,深夜労働や休日労働については実労働時間で算定しなければなりませんし,みなし時間が法定労働時間(8時間)を超えていれば,当然に時間外労働は発生します。
posted by テッキー at 17:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 残業代の計算(上級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。