2011年12月20日

差押えの競合

強制執行(初級編)の債権執行のハナシは,運良く差押えが競合しなかった場合や差押えが競合しても全額回収できた場合のハナシでした晴れ

では,差押えが競合して全額回収ができない場合は,どうなるのでしょうか・・・目

以下の事例で見ていきましょうグッド(上向き矢印)

債権者Aは,債務者Xに対して,100万円の金銭債権があり,債務名義も持っています。
債権者Bは,債務者Xに対して,200万円の金銭債権があり,債務名義も持っています。
も,の預金払出請求権を差押えようと,C銀行銀行第三債務者として債権差押命令の申立を行いました。

ある日,
C銀行に,分の預金の差押命令(100万円)が届きました。
その時のの預金残高は150万円でした有料
C銀行は,即座にが差押えた分(100万円)を凍結し,陳述書にて「の預金は存在し,100万円支払う意思もあります。」と回答しました。

その次の日,
C銀行に,今度は分の預金の差押命令(200万円)が届きました。
その時のの預金残高は,昨日と同じく150万円でした有料
C銀行は,即座にが差押えた分(残高が150万円しかないので,150万円)を凍結し,陳述書にて「の預金は存在しますが,(差押債権額100万円)との差押えが競合しているので,支払う意思はありません。」と回答しました。

そんなことが起こっていると知らないは,取立権が発生したので,差押えた100万円C銀行から取り立てようとC銀行に連絡しましたが,「と差押えが競合したので,支払えません。」と言われてしまいましたがく〜(落胆した顔)

C銀行は,AとBの差押債権の合計は300万円のところXの預金残高は150万円と,AとB両方に全額支払うには足りないので,凍結している預金残高150万円を供託しなければなりません義務供託exclamation

そこで,C銀行は,の預金残高150万円を供託し,裁判所ビル事情届(東京地裁の書式)を提出しました。
この供託によって,C銀行は,預金の返還義務を逃れますかわいい
には,差押命令に記載された請求債権の按分割合で,供託された150万円の「配当」を受けることになりますひらめき

事情届を受け取った裁判所ビルは,競合した債権者()に,「配当期日呼出状」を送付しますmail to
は,期日の請書・債権計算書を裁判所に提出しますグッド(上向き矢印)

配当期日に,は,裁判所から,配当金額の証明書を受け取ります手(パー)
※配当期日に出頭できないときは,証明書の受書を事前に裁判所に提出しておくと,期日後に証明書を送ってくれますmail to

は,供託所で,証明書を添付して供託金の払渡請求を行い,配当金を受け取りまするんるん

そして,気になるが受け取る配当金額は・・・・ひらめき
A: 50万円 【供託金150万円×Aの按分割合(Aの請求債権額100万円/AとBの請求債権額合計300万円)】
B:100万円 【供託金150万円×Bの按分割合(Bの請求債権額100万円/AとBの請求債権額合計300万円)】

となります決定
posted by テッキー at 11:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月22日

差押えの競合【転付命令で回避しよう!】

差押えの競合」のハナシでは,債務者Xに対して100万円の債権を持っているは,の財産を差押えたにもかかわらず,他の債権者と差押えが競合したために,50万円の配当金を受け取っただけでしたねたらーっ(汗)

としては,「私が最初にの財産を差押えたのだから,差押えた分については全額私のものにしたいexclamation×2」と思うでしょう。
転付命令を使うと,それが実現できますひらめき

前回と同じ,以下の事例で見ていきましょうグッド(上向き矢印)

債権者Aは,債務者Xに対して,100万円の金銭債権があり,債務名義も持っています。
債権者Bは,債務者Xに対して,200万円の金銭債権があり,債務名義も持っています。
も,の預金払出請求権を差押えようと,C銀行銀行第三債務者として債権差押命令の申立を行いました。
かわいいについては,債権差押命令の申立と同時に,転付命令の申立も行いましたひらめき

ある日,
C銀行に,分の預金の『差押及び転付命令』(100万円)が届きました。
その時のの預金残高は150万円でした有料
C銀行は,即座にが差押えた分(100万円)を凍結しましたぴかぴか(新しい)
陳述書では,差押のみの場合と同じく,「の預金は存在し,100万円支払う意思もあります。」と回答しました。

その次の日,
C銀行に,今度は分の預金の差押命令(200万円)が届きました。
その時のの預金残高は,昨日と同じく150万円だったので,C銀行は,昨日凍結した100万円の他に50万円も(合計150万円全額)凍結しましたexclamation
そして,陳述書にて「の預金は存在し,に支払う意思もありますが,この他に,が先に転付命令つきの差押を100万円しています。」と回答しました。

債務者が,の転付命令について,命令を受け取ってから1週間以内に執行抗告しなかったので,転付命令は確定しましたひらめき
の転付命令がC銀行に届いた日に遡って,券面額(100万円)がに転付され,から100万円の弁済を受けたことになりました決定

100万円の持ち主として,C銀行に対して払出請求を行い,全額回収できましたわーい(嬉しい顔)るんるん

一方,は,取立権が発生した後に,C銀行に対して取立を行いますが,金額は残った50万円のみしか回収できませんもうやだ〜(悲しい顔)

このように,転付命令は便利な制度ですが,以下のようなデメリットもあるので,注意しながら利用しましょうかわいい
位置情報転付命令が第三債務者に送達された時に,既に差押等の競合があるときは,転付命令の効力は生じません。
位置情報転付命令が確定すると,券面額で債務者から弁済を受けたことになりますので,第三債務者が無資力で支払えないとしても,債権者は債務者に対して,この分を請求することはできなくなります。
(事例の場合,が払出を受ける前にC銀行が破産してなくなってしまうと,が回収できなかった100万円について,再度に対して請求しようとしても,それはできないことになります。)
posted by テッキー at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月26日

債権執行【第三債務者の供託】

債権執行がなされると,第三債務者の立場の人は,突然,裁判所から「債権差押命令」が届くので,ビックリするでしょうあせあせ(飛び散る汗)

債権差押命令には,「第三債務者は,差押えられた債権について,債務者に対し,弁済をしてはならない。」との記載があり,差押えられたものは債務者へ支払うことを禁止されますexclamation

第三債務者としては,@差し押さえられた債権を債務者へ支払うことをストップし,A陳述書で回答をします。次に,B差押えられた債権をどうするかについて考えます台風が,第三債務者がとる対応としては,以下のいずれかになりますひらめき

1差押の競合がない場合かわいい差押債権者の取立てに応じて,差押債権者に支払うかわいい供託をする(権利供託といいます。)のいずれかをすることで,責任を逃れますわーい(嬉しい顔)
 ※差押の競合がない場合とは,差押債権者が1名の場合,または,差押債権者が数名いるけれども差押の金額全てまかなえる場合です。

2差押が競合した場合かわいい供託をする(義務供託といいます。)しか,責任を逃れるすべはありませんふらふら


かわいい供託をした場合は,第三債務者は,執行裁判所に「事情届」を提出して,供託した事実を知らせます手(パー)
 ※事情届の提出義務については,権利供託でも義務供託でも同じです。
posted by テッキー at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月30日

債権執行【配当要求】

差押をしようとする債務者の債権が既に別の債権者によって差押えられている場合,競合することを承知で債権差押の申立をする以外に,配当要求の申立をするという方法がありますひらめき

配当要求をすることのメリットとしては,申立費用が安い(印紙代:500円。債権差押の申立は4000円。)こと,申立を裁判所が受理したときに効力が発生することが挙げられますグッド(上向き矢印)
仮に,1月30日に,債権差押の申立を行い,第三債務者に2月2日に差押命令が送達されたとします。
もし,2月1日に,差押えられた債権について,第三債務者が供託してしまった場合は,その後(2月2日)に差押命令が届いたときには,「空振り(もう差押える債権がない)」ということになってしまいますもうやだ〜(悲しい顔)
ところが,1月30日に配当要求の申立を行って,裁判所に受理された場合は,この時点で配当要求の効力が発生するので,2月1日に供託された債権について,配当手続に加入することができ,先に差押をしていた債権者との按分割合で配当を受けることができることになりますわーい(嬉しい顔)

配当要求をすることができるのは,1執行力のある債務名義の正本を有する債権者と,2文書により先取特権を有することを証明した債権者に限られています手(パー)

配当要求の申立は,以下の時までに裁判所に受理されなければ,配当に加入することはできません。(配当要求の終期
1.第三債務者が,差押えられた債権につき,供託をした時
2.取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時
3.売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時
4.動産引渡請求権の差押えの場合は,執行官がその動産の引渡しを受けた時

配当要求の申立は,既になされている差押命令を発令した執行裁判所に,配当要求書を提出して行います。
配当要求書が無事に受理されると,執行裁判所は,「配当要求があった旨の通告書」を第三債務者に送達しますmail to

「配当要求があった旨の通告書」を,第三債務者が受け取ると,第三債務者は,差押えが競合した場合同様,義務供託をしなければなりませんexclamation


posted by テッキー at 15:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月03日

仮執行宣言に基づく執行に対する強制執行停止

仮に,「被告は,原告に対し,金100万円を支払え。この判決は仮に執行することができる。」という第一審判決がでたとしますひらめき

被告は,「この判決は間違ってるから控訴する!」と控訴して訴訟は続いたとしても,仮執行宣言(「この判決は仮に執行することができる。」という主文があるもの。)が付いているので,強制執行はされてしまいますがく〜(落胆した顔)

そこで,控訴に伴って,強制執行停止の申立を行うことで,強制執行を停止させましょう手(グー)

強制執行停止の申立は,控訴審の判決が出るまでの間は,いつでも申立ができます。
ただし,強制執行された後だと意味がなくなるのであせあせ(飛び散る汗)強制執行されては困る場合は,なるべく早め(控訴したらすぐくらい)に申し立てましょう手(パー)

控訴を提起した申立人(=第一審の「被告」=控訴審の「控訴人」=強制執行をされた場合は「債務者」)は,
強制執行停止の申立書に,「申立の理由」として,原判決が取り消されたり変更されたりする可能性があることを記載し,これを疎明する資料を添付して,申し立てます。(当事者が法人の場合は資格証明書が,代理人が行う場合は委任状も添付します。)
印紙代は,500円です有料
申立先は,訴訟記録がある裁判所です。通常は,早めに申立をするので,控訴状と強制執行停止の申立書は,原審(第一審)の裁判所に提出するケースが多いでしょうグッド(上向き矢印)

裁判所が強制執行を停止させる理由があるとし,「担保が必要」と判断した場合は,その担保金額を,その裁判所の管轄の供託所に供託します手(パー)

担保を積んだことを裁判所に連絡する(通常,供託書を提出します。)と,裁判所は強制執行停止決定を出しますひらめき

債権者が,まだ執行文付与の申立をしていない場合は,訴訟記録のある裁判所に停止決定正本を提出すれば,債権者が執行文付与の申立をしても執行文は付与されません手(チョキ)
もし,債権者が既に強制執行の申立をしている場合は,債権者が強制執行の申立を行った裁判所に,停止決定正本を提出することで,強制執行は停止しますかわいい(通常,上申書と一緒に提出します。)
posted by テッキー at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月21日

転付命令の注意事項@【差押の競合がある場合はダメ】

転付命令は,差押えた金銭債権を,強制的に債務者から差押債権者に移転させる効力がありますねひらめき

ただしexclamation転付命令が第三債務者に送達される時までに,差押が競合してしまうと,その効力が生じませんバッド(下向き矢印)

なので,差し押さえられた金銭債権がある場合には,転付命令を申立てる前に一度,第三債務者に競合がないかを確認して申し立てるとよいでしょう手(パー)
※実務上は,差押命令の申立てと同時に申し立てられることが多いですがかわいい


転付命令の申立てがあると,裁判所は,要件を満たせば発令し,債務者と第三債務者に送達しますmail to

第三債務者が受け取った時点で差押の競合がなければ,あとは確定を待って確定すると,無事,被転付債権は差押債権者に転付されることになります決定

債務者や第三債務者は,転付命令の裁判について,受け取ってから1週間以内に執行抗告することができるので,
この1週間内に執行抗告されなければ,転付命令は確定しますぴかぴか(新しい)

差押の競合を転付命令で回避しよう!」のように,場合に応じて活用しましょうわーい(嬉しい顔)るんるん
posted by テッキー at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月23日

転付命令の注意事項A【発令の要件】

転付命令の発令について,民事執行法本には,『執行裁判所は,差押債権者の申立てにより,支払に代えて券面額で転付命令を発することができる。』と規定されていますひらめき

なので,転付命令が発令される要件は,以下のようになります手(パー)
@差押債権者の申立て。=差押が有効になされていること。
A被差押債権が譲渡性を有すること。
B被差押債権が「券面額」を有すること。⇒「券面額」とは,債権の目的として給付すべき金額のことです。

※B「の券面額がない」ものには,将来の給与や退職金の請求権・事故が発生していないときの保険金請求権・賃貸物件返還前の敷金返還請求権などがありますかわいい
posted by テッキー at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月25日

転付命令の注意事項B【発令の要件〜券面額〜】

転付命令の発令の要件を備えていることを,「被転付適格(ひてんぷてきかく)がある」といいますひらめき

今回は,要件の1つである「券面額」について,いくつかの具体例を検証しましょうグッド(上向き矢印)
※「券面額」とは,債権の目的として給付すべき金額のことです。

その@【退職金請求権】
退職金請求権は,労務の提供をした代償としての性質を持つため,退職をした時に初めて被転付適格を有することになります。

そのA【保険金請求権】
保険金請求権は,保険事故が発生して初めて保険金請求権が具現化するため,保険事故が発生した場合に被転付適格を有することになります。

そのB【敷金返還請求権】
敷金返還請求権は,賃借物件を明け渡した後に賃貸人がする未払家賃の回収や物件の清掃の費用を差し引いて残ったものについての返還請求権のため,被転付適格を有するには契約が終了して賃借物件の返還することが必要になります。
posted by テッキー at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月29日

転付命令の注意事項C【供託金についての被転付適格】

供託金について差押えする際の被差押債権は,『供託者の取戻請求権』と『被供託者の還付請求権』の2つがありますひらめき

1弁済供託の場合・・・『供託者の取戻請求権』と『被供託者の還付請求権』ともに、権利が発生して金額も確定しているので、被転付適格を有します。
(注)『供託者の取戻請求権』は、被供託者が供託を受諾すると消滅してしまうので、『供託者の取戻請求権』を転付した際は気をつけましょうexclamation×2

2保証供託の場合・・・被供託者に損害が生じるかどうかが未定の間は、『供託者の取戻請求権』と『被供託者の還付請求権』ともに、権利の発生も金額も未確定なので、被転付適格を有しません。
ただし、債権執行【供託金の差押え】で少しふれたように、被供託者自身が差押&転付命令を申し立てた場合は、自己の還付請求権を放棄したものと扱われるので、被転付適格が認められます決定

posted by テッキー at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月31日

被供託者による供託金の転付〜回収まで〜

被供託者が,供託金について差押&転付命令を申し立てた場合の回収有料までをおさらいしましょうるんるん

【事例】債務者が本案の控訴に伴う強制執行停止のために積んだ担保(供託金)について,債権者は差押&転付命令を取りましたひらめき

1転付命令の確定。
 →債務者の供託金取戻請求権が,差押債権者に転付されます。=債権者は担保提供者(債務者)の特定承継人となります手(パー)
 →2のために,転付命令の確定証明書を取っておきましょうグッド(上向き矢印)

2担保提供者(特定承継人)として,担保取消(または担保取戻許可)の申立(申請)を行います。
 →担保権利者の同意を得ているのと同じ状況のため,担保取消決定(または担保取戻許可決定)は(一定期間を待つなどの必要はなく)すぐに出ます手(チョキ)
 →3のために,供託原因消滅証明書(または担保取戻許可決定書)を取っておきましょうグッド(上向き矢印)

3供託所で供託金の払渡しを受けます。
 →供託金払渡請求書に供託原因消滅証明書(または担保取戻許可決定書)などの必要書類を添付して,供託金を取り戻します決定
posted by テッキー at 15:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 強制執行(中級編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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