ただし,「事業の正常な運営を妨げる事由」があれば,使用者はその時季を変更することができます。これを時季変更権といいます。
では,「事業の正常な運営を妨げる事由」とはどういうことかといいますと,当該労働者のその日(年次有給休暇を請求した日)の労働が,所属する事業場のその日の業務運営にとって必要不可欠であり,当該労働者が就労しないと事業場全体の業務が阻害される,という場合です。
ですから,単に繁忙期だからという理由などでは,時季変更権は認められません。
例えば,その日の重要な業務の責任者を任されていたり,一度に多くの労働者の年次有給休暇の請求が集中したり,どうしても人員の確保ができない場合などに限って認められます。
また,年次有給休暇を長期で請求する場合などは,使用者側の業務計画や他の労働者の休暇の事情などもありますので,使用者と事前調整をするのが望ましいと言えます。
それに対して労働者が全く応じなかったり,調整を行う余裕もないような請求をした場合には,使用者は時季変更権を行使できます。
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