
Aとしては,「私が最初にXの財産を差押えたのだから,差押えた分については全額私のものにしたい

『転付命令』を使うと,それが実現できます

前回と同じ,以下の事例で見ていきましょう

債権者Aは,債務者Xに対して,100万円の金銭債権があり,債務名義も持っています。
債権者Bは,債務者Xに対して,200万円の金銭債権があり,債務名義も持っています。
AもBも,Xの預金払出請求権を差押えようと,C銀行



ある日,
C銀行に,A分のX預金の『差押及び転付命令』(100万円)が届きました。
その時のXの預金残高は150万円でした

C銀行は,即座にAが差押えた分(100万円)を凍結しました

陳述書では,差押のみの場合と同じく,「Xの預金は存在し,Aに100万円支払う意思もあります。」と回答しました。
その次の日,
C銀行に,今度はB分のX預金の差押命令(200万円)が届きました。
その時のXの預金残高は,昨日と同じく150万円だったので,C銀行は,昨日凍結した100万円の他に50万円も(合計150万円全額)凍結しました

そして,陳述書にて「Xの預金は存在し,Bに支払う意思もありますが,この他に,Aが先に転付命令つきの差押を100万円しています。」と回答しました。
債務者Xが,Aの転付命令について,命令を受け取ってから1週間以内に執行抗告しなかったので,転付命令は確定しました

⇒Aの転付命令がC銀行に届いた日に遡って,券面額(100万円)がAに転付され,Xから100万円の弁済を受けたことになりました

Aは100万円の持ち主として,C銀行に対して払出請求を行い,全額回収できました


一方,Bは,取立権が発生した後に,C銀行に対して取立を行いますが,金額は残った50万円のみしか回収できません

このように,転付命令は便利な制度ですが,以下のようなデメリットもあるので,注意しながら利用しましょう



(事例の場合,Aが払出を受ける前にC銀行が破産してなくなってしまうと,Aが回収できなかった100万円について,再度Xに対して請求しようとしても,それはできないことになります。)